天塩川とトラディショナルスペイ
僕がそのスペイキャスターと出会ったのは6年前の天塩川たった。彼は天塩川でトラディショナルスペイ、そしてサーモフライスイングで天塩川本流イトウを狙っている達人中の達人だった。大河に立ち込む彼のその佇まいとそのダイナミックかつエレガントなキャスティングに衝撃を受けた。釣れない釣りしてるんだ。彼はいつもそう言っていた。
トラディショナルスペイとは流れきって川と並行になって浮いているダブルテーパーのフローティングラインを川面から剥がし、そのロングベリーを135度空を舞わせて90度角度変換(チェンジディレクション)、アンカー1発で対岸向けてシュートするスペイキャスティングだ。リフト、スウィープ、アンカー、Dループ、シュート。この流れるような一連の動作にほんの少しでも狂いが生ずると上手くいかない。
両腕にずしりとかかる高番手ロッドの重さ、そしてフライラインの長さと重さに恐れ戦く事になるだろう。今までやってきたライフィッシングと全くの別次元のものに触れてしまった瞬間だ。フライラインを川面から剥がすリフトという初動でさえ全く出来なかった。
無理だからやめた方がいい。当時は何度もそう言われた。が、実は1人でずっと続けてきたのだ。それはトラディショナルスペイがフライフィッシングの究極にして至高の形だからだ。やる必要性?あるわけない。やったからって何の意味もない。魚は釣れるどころか釣れなくなる。
そもそも、乗る必要の無い車に乗り、する必要の無い旅をし、釣る必要の無い釣りをしている。だったらやってやろうじゃないか、究極の釣れない釣りを。そう、リバーノマドの正体は変態なのである。どうにか飛ばせるようになるまでに3年かかった。ある程度満足行くキャスティングまで5年かかった。今年で7年目になるが今でも修行中だ。
釣れない釣りに自らハードルを上げていくスタイル。でもこれこそがフライフィッシングの醍醐味だと思う。ゲームは難しい方がおもしろい。トラディショナルスペイとはフライフィッシングの幅をより広げより奥深く愉しむ為の究極のフライフィッシングなのだ。
そして同時にそれは瞑想であり、穏やかなる事を学ぶ釣れない美的コミュニケーションであり、マズローの5段回欲求説のさらに上にあると言われる自己超越=ハイプレートエクスペリエンス=PNSEなのだ。
あなたが射つのではない
“それ”が射つのです
オイゲンベリゲル 弓と禅より
#リバーノマドのバイブル本
#ジョブズの愛読本
#釣れない美的コミュニケーション
#静謐の研究
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北海道200Days FlyFishing Campの旅12年目、旅する北海道フライフィッシングガイド【リバーノマド】です。2013年6月15日〜11月15まで北海道でのフライフィッシングガイドを承ります。ご予約はお早め目に。